今の家に引っ越してから初めての春、庭のあちこちにツクシが顔を出していた。
童謡やお話の中ではよく見聞きする「ツクシ」だが、実際に生活の中で見かけることは滅多になかったので、
こんなに当たり前のように生えてくるものなのかと驚いたものだ。
夫によると、ツクシは酸性土壌を好む植物なので(この時点では庭はほったらかしの荒れ地)、
この先土を耕したり土壌改良をして肥えた土地にしていけば、あまり生えてこなくなるかもしれないとのこと。
雑草とはいえ、季語にもなっているほど春を象徴する植物であるツクシ。
それが見られなくなるのはさみしいなぁと感じたが、5年後のこの春にも元気ににょきにょきと生えてきてくれた。
さすが防除難雑草、「地獄草」の別名を持つだけはある、非常にタフだ。
ちなみにツクシは胞子茎の姿の呼び名で、成長して栄養茎になるとスギナと名前を変える。
春先の朝、朝露をまとってきらきらと輝くスギナはなかなかに風情がある。
普段は生えるままにほったらかしにしているツクシ。
が、ごくまれに調理してみようかという気になるときもある。
そんなときはザルいっぱいにツクシを採り集め、一本一本ちまちまとハカマを取り除いていく。
なかなか地道な作業である上に、作業を進めるにつれ指や爪にはベトベトした灰汁がまとわりついてくる。
ちなみに写真のツクシはカサが開いて胞子が飛んでしまっているものが多く見られるが、
本当はこうなる前のカサがしっかり閉じたもののほうが食用には適しているらしい。
こういう地道な作業が得意な夫。
捨てられるハカマ部分を狙って、鶏たちがその周りに集まってきている。なんとものどかな光景だ。
まずは下ごしらえ。
水洗いした後、たっぷりのお湯で5分ほどツクシを下茹でする。茹でていくと、胞子がお湯に溶け込んで目にも鮮やかな緑色に変わる。
水切りをしたら下ごしらえ完成。
あとは醤油や味醂で適当に味付けをして、ツクシの佃煮の完成。
肝心の味は…「これ、ツクシでやる意味あったかな?」と思うほど可もなく不可もなく、ごくごく普通の味わい。
むしろあれだけ手間暇かけてこれか!というガッカリ感。
ツクシを見つけた初年度こそ張り切って料理をしたものの、それからはツクシをみかけてもスルーするようになってしまった。
それが今年、何の気まぐれか5年ぶりにツクシを料理してみるか!という気になって作ったのがツクシのかき揚げ。
揚げ方が悪かったのか、これまたごくごく普通の味。
むしろ油をたっぷり吸っていたおかげで、胸やけを起こしてしまったくらい。
また当分は目で見て楽しむだけになりそうです…。