自転車は完成されたものを購入するのが一般的だが、用途やカスタムメイドにこだわるならビルダー(自転車のフレームを製作する工房)にフレームをオーダーするという選択もある。
もちろんメーカーの完成車より価格は割高にはなるが、フレームの素材や塗装、デザインを自由にカスタムできるのが魅力だ。
フレームができればパーツをアッセンブルし、ビルダーや自転車店で組み付けてもらい、やっと完成。納期は早いところでも3ヶ月ほどはかかる。人気のあるビルダーだと数年も待たされることがある。
オレゴン州のポートランドはアメリカではめずらしく、クルマよりも自転車や歩くことにプライオリティがある街で、自転車のフレームを製作するビルダーの数も多く、技術的なレベルも高い。
いまはエコロジーの時代だからか、ポートランドの自転車文化は日本でも注目を集めるようになった。
今回は山用のマウンテンマイクをポートランドのシグナルサイクル(http://www.signalcycles.com)にオーダーしたときのことを書いてみる。取り次ぎはシグナルサイクルと取引のある大阪のバイクショップに依頼した。
まずはビルダーに、自転車の素材、デザインなどの自分が思い描いているイメージ、身長や体重、腕、股下、肩幅などのサイズ、それに年齢を伝える。それから、自分がどういうスタイルで自転車に乗るのか、というのも重要なポイントになる。
マウンテンバイクとひとくちにいっても、傾斜のきつい下り専用のレース仕様から、のんびり里山をサイクリングするコンフォータブルなものまで、多種多様で、それぞれに最適なフォーム(乗車姿勢)がある。今回は平坦な山道を気軽に走行できる、スチール製でサスペンションも装着していない、いちばんシンプルな仕様で、とオーダーした。
すると、ビルダーから、そういう乗り方ならこんな設計で製作しますよ、というディメンションシート(寸法表)が送られてくる。これを検討、OKならばいよいよ製作開始となる。
いまどきなので、ビルダーが製作の進行状況をSNSにアップすることもしばしばだ。ビルダーにオーダーされるようなフレームは個性的なものが多いので、自転車に興味のあるフォロアーの気を惹きつけるのだろう。もちろんそれが広告にもなる。
オーダーしたフレームも製作途中にInstagramにアップされていた。"サスペンションなし、26インチのホイール、Vブレーキのレトロなマウンテンバイク"のタイトルにさっそくコメントが寄せられていたが、その文面は、こんなもの、流行んねぇ!。
自分の意図するところを理解できる人がいたんだ!と思わずニヤリとしてしまった(笑)。
溶接されたフレームが仕上がると、塗装の行程に入る。自ら塗装するビルダーもいるが、ほとんどは塗装会社に発注される(アメリカでも日本でも)。塗装会社といっても自転車を専門に請け負っているところなので、カスタムペイントにも柔軟に対応してくれる(それなりに料金は高くなるが)。今回は提示された色見本の中からカラーを選んだ。
ホイール、ハンドル、ブレーキ、変速機、サドルなどのパーツを選ぶことも肝心だ。
いまは大手メーカーだけでなく、こだわりを持って製作している小さなパーツメーカーもインターネットで容易に探し出せる時代になったので、ひとつひとつパーツを物色していくのもなかなか楽しい。
おおむね自転車の部品は軽量になるほどグレードが上がっていくようになっている。
軽い自転車を組み上げようとすると、それなりの出費がかかるが(最軽量のレース用のパーツの値段は普及品の10倍ほどもする)そのあたりは財布と相談するしかない。
フレームが出来上がると、あとはバイクショップで組み付けて完成。オーダーしてから1年ほどもかかった。
しかし、世界で1台しかない自転車を手にできるのだから、待つ甲斐は十分あると思う。