愛知県常滑を訪れた際、やきもの散歩道沿いにあった「一菁陶園(イッセイトウエン)」。そこにあった急須が、以前から欲しかったものにとても似ていて、即決で買って帰りました。
その急須は、常滑の近くの海で取れる海藻を使った「藻掛け」という手法を用いたもの。制作は土井福雄さん。
人間国宝の山田常山にもロクロは、あの人には勝てないと言われ、陶芸研究所では、後進の指導もされていたそうです。
常滑でろくろ技法の伝統工芸士 第1号にも認定されています。
急須の上部の模様は、藻掛けという手法によるもの。何といっても、この形に惹かれました。
常滑のやきもの散歩道。長いコースはなんと4kmもあって、約2時間の行程。
「美しい日本の歴史的風土準100選」にも選ばれています。
町の中には古い建物が多く、茶色と黒の世界。茶色はレンガ、黒は家屋の木材の墨色。
細い路地を歩いていると夢の中に迷い込んだような別世界。
名古屋芸術大学の常滑工房ギャラリー。
以前は土管の工場だった場所。常滑は土管の生産量で日本一だったそうです。
近くにはトイレ、洗面器などの衛生陶器の製造で有名なINAXの本社もあります。(現LIXIL)
やきもの散歩道は長いだけでなく、けっこうアップダウンもあって、へとへとに。
やきもの散歩道沿いにあった「一菁陶園」
「一菁陶園」。モダンな雰囲気のお店ですが、歴史があります。
「一菁陶園」のお店の様子。
お店には、イタリアでも勉強された今の主人が、明るい色調のモダンな器を作陶されています。
お店のすぐ裏には、大きな窯があります。
この急須は、もうお亡くなりなっている大正生まれの土井福雄さんの作。
昔訪れたお茶屋さんで使われていた急須が、とても小さくて、薄く軽いもので、一目で気に入りました。サイズは一人分のお茶が入れることができる大きさ。
素焼きの茶色一色のもので、長く使われ、味わい深く色が変わっていました。頻繁に使用してるので欠けたりしていたのですが、そんなことは全く気にならないほどいい味が出ていました。
お店の人に聞くと、今は作られていないということで、買うのは諦めていました。
ところが、常滑でその時の急須にとてもよく似たこの急須に出合い、探していた急須に出会えた!と興奮。
元々、土井福雄さんは、インク瓶の制作されていましたが、一菁陶園の初代のご主人が目を付けて、焼物をやかせたそうです。
人に誇ることなく、とても朴特な人柄だったそうですが、作陶中は初代以外の人は近寄ることが出来なかったらしく、とくにロクロの技術に長けていて、人間国宝の山田丈山も、ロクロはこの人に適わないと言っていたそうです。
名声とかには関心がなく、ただ作ることに無心に向き合うその人柄にも惹かれました。
藻掛けに使われるジュズモと呼ばれる海藻。常滑独自の技法です。
そそぎ口のスパンっと切り落としとような形状、取っ手のラッパのようなカタチ
普通、フタに空いてる空気穴が取っ手の所に生クリームを捻ったあとみたいな手法でカタチ作られています。
その一つ一つの技術にすごいなぁと見とれてしまいました。しかもそれをこんなに薄く仕上げることって難しそう。
とても薄く軽く作られているにもかかわらず、ちゃんと持ち手だけで安定して立ちます。
お茶屋さん曰く、このバランスでちゃんと立つ急須が良い急須だと教えもらったことがあります。
今は、倉庫に眠っていた作品を少しづつ出して、販売しているそうです。数も限られていますので、たいせつに長く使いたいです。